小学校英語というチャレンジ

 

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■小学校英語教材

 「誰でも話せる」を目標とするなら、自治体への協力は不可欠です。千葉県松戸市オリジナル小学校英語教材への協力はその一環でした。この教材を作成するに当たって念頭にあったのは、(1)小学校教員に負荷をかけない、(2) 担当教員の能力に依存しない、(2)学生の発言回数をできるだけ増やす、(3)まちがっても英語嫌いにさせない、でした。

 

■小学校教員に負荷をかけない

 すでに十分以上の重責を担っている小学校教員に、さらに英語指導という未知の負荷をかけることはむずかしいでしょう。たとえALTなどの助けを借りるとしても、です。教師が教壇に立つためには、教科内容に十全の自信をもち、教材を吟味し、教える手順を考案し、興味深く伝える手法を精査しなければなりません。1つの授業の前には数多くの準備が必要なのです。まったく新しい未知の教科を教える---その厳しさは一般の方が考える以上のものがあるのです。「来年から微分積分を楽しく教えてあげてくださいね、簡単でいいから」と言われたらどう思いますか?ましてや英語には、すぐには身につかない発音・語彙力などさまざまな項目があるのです。英語の時間になったらテレビの電源を入れる。後は学生と一緒にレッスンを楽しむ。自信のない学生がいれば、勇気づけてやる。小学校教員にお願いできる負担は、その程度が上限でしょう。

 

■担当教員(ALT含)の能力に依存しない

 大学において英語教育の単位修得を義務づけられていない小学校教員には、当然英語力の濃淡があるでしょう。またサポートするALTにも、その教授姿勢・テクニック・背景的な知識の濃淡が極端にあります。自由裁量が大きい授業内容を縛りなくお任せした場合、どの教員が担当するかによって授業に質にバラツキがでることは避けられません。個々の能力に依存しない教材の形が不可欠だと結論しました。また、ALTの手当てがさまざまな理由からむずかしい自治体もあろうかと思います。そうした自治体でも使える教材の提案を念頭に置きました。

 

■発言回数をできるだけ増やす

 中学校からの和文英訳を中心とする(今後の変革が望まれますが)学習に決定的に欠けているのは、「英語を口から出してみる」経験です。音と結びついていないことばは、決して実用には供しません。小学校の段階で楽しみながら英語音に慣れ英語のリズムを刻めるようになることができたなら、中学校の勉強も「体」と結びついて実りあるものになるはずです。教材では常に口を開かせることを目標にしました。

 

■英語嫌いにさせない

 多くの学生は英語に新鮮な興味を抱いています。それが、学び始めてから2年---従来中2くらいの段階---で「嫌いな教科」の仲間入りを果たします。そのプロセスが小学校で起こることは許されません。「英語は楽しい」、その気持ちを持った学生を中学校の先生方に託すことも大きな目標でした。文法用語などは極力排し、毎日の学習を楽しく終わることができるよう配慮しました。

 

 こうして小学校英語教材2年分、ビデオ教材・テキストブックを完成させました。Chris, David との協力。教育委員会の方々の献身的な努力・熱意・惜しみない協力。幼児英語教育に携わる有志の方々の貴重なご助言。私が関わったのはホンの一部であったのだ、と今にして思います。

 

 「あ。ヒロトがいる」

 

 新松戸駅の近くを歩いていると、笑顔の小学生に追っかけられます。サインしたりもします。クリスもディビットも同じような経験をしている様子。この教材、成功したんだろうなぁ。

 

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